読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす』

今日の「経営学ステップアップ」という担当授業の中で、「経営学の理論は、考えるためのきっかけのようなものなので、思い思いにアレンジして使えばいい」というような話をしてたら、この『組織開発の探究』でも、組織開発をそのようなものとして位置付けてあった。

内容としては、組織開発の教科書というべきもので(まさに学問の「教科書」の名にふさわしいと思う)、組織開発の思想(的基盤)がしっかり述べられた後、組織開発の代表的な手法についての解説が続くのだが、それらの手法を実践の中でいかにアレンジして用いうるか(つまり、それぞれの企業の状況に適した形で用いうるか)ということに関しても、最後の方に(簡単なものではあるが)実践事例を通して論じられているのがよかった(ヤフーの事例とかおもしろかった)。あと、巻末の「組織開発の系譜」という図表がすごい。

まあ、というわけなので、本書は、組織開発の「探究」というよりは、むしろ「入門」にもってこいの書ということになる。

で、「探究」ということなら、個人的により突っ込んで知りたいというか考えたいと思うのは、組織開発の実践に対する研究者の関わり合い方について。本書でも、「企業における組織開発の実際」(p. 54~)として、組織開発がスムーズに進むとは限らないこと、それゆえ、組織開発のモデル(理論)を時に手放す必要があることなどが触れられており、著者自身、人間主義に立つ理想的な組織開発を「青臭いモードの働きかけ」と呼び、実際の組織開発はしばしば「血生臭い」ものと結びつくとしている。であるならば、こうした「血生臭い」実践の中で、研究者はどのような役割を果たすことができるのかとか(あえて「青臭さ」を前面に掲げてみたり?)、そういう介入にまつわる政治を踏まえた方法論的議論が、アクション・リサーチ的にもホットなテーマになるかな、と。

実はこの点はたぶん、「診断型組織開発/対話型組織開発」というダイコトミーをあくまで理念型と位置付けるという議論にもつながっており(pp. 308-309)、つまり、それらはどちらが優れているとかいう二者択一ではなく、端的に実践のモードの違いに過ぎず、状況に応じてその切り替えや混合が柔軟に求められる、、、とするならば、なおさら方法論的にここを「探究」するのが重要だし、おもしろそうだと思う。

組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす

組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす