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I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『Virginia / ヴァージニア』

Virginia/ヴァージニア(吹替版)

Virginia/ヴァージニア(吹替版)

  • メディア: Prime Video
 

なんの予備知識もないままに、なんとなく心惹かれたので見てみたら、冒頭から物語の舞台となる街がいかに陰惨であるかについてどうたらこうたらという三流小説のような説明的ナレーションが入ってきて、その街に自分の本の営業のために訪れた冴えない三流作家然とした主人公が、ホラー好きな街の保安官に持ちかけられて創作のネタにと死体安置所に行ってみたり、かつてエドガー・アラン・ポオが投宿したという廃ホテルを訪れたりしているうちにずるりと異世界に滑り込んでしまい、なんやかんや…という感じで、CGを駆使したファンタジーな映像も含めてB級C級な雰囲気をふんだんに醸し出しているのだけれど、まあ、最後まで見てみるとそれにはちゃんとわけがあったのだよ、ということで、エンドロールを見れば脚本・監督はなんとフランシス・コッポラ、冒頭の妙なナレーションはトム・ウェイツであったらしい(まあ、そこは吹替で見ていたので気づきようがなかったが)。

ただ、最後のタネ明かしですっきりするかというと、エンドロール直前の後日談みたいな説明を読むと、どうも話に腑に落ちないところもあって、フランシス・コッポラでもあることだし、もしかしたらこの映画には壮大な謎が隠されているのかもしれないとちょっと考え込んでみたのだけど、なにしろ手がかりが少なすぎて諦めてしまった。で、他の人の考察とかを見ていると、この映画の原題が ”TWIXIT” (意味は「〜〜の間」とか「どっちつかず」)なので、結局のところ真相はわからないだろう、と言っている人がいて、やっぱり諦めて正解だったのである。

ちなみに、作中に主人公が自身の過去のトラウマに向き合い傷を癒すという精神分析的なテーマがあり、この映画を精神分析的に(と言っていいのかわからないが)見てみると、三流作家、ポオ、悪魔崇拝のリーダー、気の狂った牧師、(そして保安官も?)あたりはみんな同一人物=「私」と見なせるのかもしれないし、そうした様々な「私」が織り成すドラマを描ききるということが、創作のスランプを乗り越えてよい作品(まあ、映画の中ではそれなりのヒット作ということだったが)を生み出すという本作のもうひとつのテーマと重なっている、のかもしれない。