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『フェリーニのローマ』

フェリーニのローマ [DVD]

フェリーニのローマ [DVD]

  • 発売日: 2008/02/22
  • メディア: DVD
 

今年の大晦日は『フェリーニのローマ』。この映画は、フェリーニがローマという都市を撮るというものなのだが、いくつかの年代にまたがるいくつかの場面を寄せ集めてひとつのフィルムにしたという作りで、まともなストーリーもなければ主人公もいない。見る側からすると、ひたすら誰ともわからない人たちの生活の様子を断片的に見させられることになるので、けっこうハードルが高い映画というか、私自身もところどころウトウトしちゃったりしたわけだけど、それでもまあ見どころはたくさんある。

「ローマを撮る」ということになると、ふつうはローマでロケをするということになるのだが、そこはフェリーニ、ローマをセットで再構築してやろうという発想らしい(もちろんところどころロケもしているが)。そうして、異様に騒がしくて猥雑なレストランや劇場、おぞましい娼館、現代の空気に触れることで消えていく遺跡の壁画、聖職者のファッションショーなど、「フェリーニのローマ」という奇妙な都市空間ができあがるわけである。

まあ、ローマみたいな観光都市というと、テレビやら旅行会社やらがきれいなイメージを売りまくっているし、かたや「都市のリアル」というような名目で殊更暗部が暴かれたりもするのだが、そうした描き方ではなく、愛憎入り乱れるというか、虚実が入り乱れるようなやり方で都市を描くというのは面白い。言うならば「嘘のドキュメンタリー」というような感じか。東京(は私はあまり馴染みがないが)とか大阪とか京都でやってみるとどうなるだろうかと考えるのも楽しい。