スタンリー・キューブリックが絶賛したという触れ込みで見た。案の定、ハリウッド的ではない感じで、ストーリーに劇的な起伏などというものはなく、ヒーロー(というかサスペンスなのでこの場合アンチヒーローか)もとくに登場しない。というわけでまあ退屈する人は退屈するだろうけれど、大仰なのをうざったいと思うような人には向いている。私としても、なんら退屈せずにするりと見れた。
で、作品のテーマは好奇心。ごく普通の生活をしている平凡な私たちでも、ときにさしたる理由もなく突拍子もないことをしてみたくなる。例えば、高層ビルの最上階から下を眺めたときに、今ここから飛び降りたらどうなるのだろう、とか、高速道路を走っている最中に、ほんの数秒間ハンドルから手を離せばどうなるのだろう、とか、駅のホームに通過電車が入ってきたとき、前に並んでいる人を突き飛ばすとどうなるのだろう、とか。こうしたことを、私たちは絶対に実行には移さないのだけれど、それでもふと想像してしまう。で、こうした好奇心が抑えられなくなったとき、そこに偶然が重なるとどうなるかというのがこの映画である。