あべのハルカス美術館のギュスターヴ・モロー展に行ってきた。
ちょっと予習していこうということで、家にあった画集をざっと眺めてから行った。
画集の解説を読んでいると、ギュスターヴ・モローという人は、師匠もなければ弟子もいない「孤高の画家」とか「パリの隠者」とか言われていたそうだが、こうしたイメージは、ユイスマンスの『さかしま』でどうもちょっと間違った紹介のされ方をしたことに由来するらしく、実際はいろんな交流関係もあったらしい(モロー自身が、個人的背景から作品を読み解かれるのを嫌って自身のプライベートを隠していたらしく、後の研究でその辺の事情なんかも明らかになったということで、ユイスマンスの記述は当時としてはまあしかたなかったということらしい)。で、もうひとつギュスターヴ・モローのよくあるイメージとしては、マザコンのホモセクシュアルでミソジニーだったというもので、そうした性的コンプレックスから悪魔的なファム・ファタールを描き続けたということだが、それもちょっとどうも事情が違っているらしく、確かに生涯独身ではあったものの30年間ほど事実上の婚姻関係にあったデュルーという女性もいたらしく、このへんのことから、モローの描くファム・ファタールを解釈しなおそう、というのが今回の「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」のテーマであるらしい。
ということで、一連のファム・ファタール作品もよかったのだけど、最愛の人デュルーに先立たれた直後に描かれた「パルカと死の天使」という絵が一番ものすごかった。画集で見てもそれなりにかっこいい絵だが、これは生で見るとほんと悲愴というか、迫力がちがう。
ユイスマンスとかルドンとか、久しぶりに読み直してみたくなったし、もちろん頭の中で鳴ってる音楽はヴェルヴェット・アンダーグラウンドという一日だった。
- 作者: J.K.ユイスマンス,渋澤龍彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2002/06/01
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