読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

社会学

『「能力」の生きづらさをほぐす』

「能力」の生きづらさをほぐす 作者:勅使川原真衣 どく社 Amazon よい本です。著者は教育社会学を学んだ組織開発コンサルタントの方だということで,ハイパーメリトクラシーとか人材開発業界(能力屋)とかの問題点を指摘した上で,個人の能力ではなくて,組…

『企業が求める〈主体性〉とは何か 教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析』

企業が求める〈主体性〉とは何か:教育と労働をつなぐ〈主体性〉言説の分析 作者:武藤 浩子 東信堂 Amazon 昨今、「主体性」という言葉はとにかくポジティブな価値を帯びたものとして、各方面でご都合主義的に多用されまくっているキラキラワードなので、私…

最近はこの辺のをパラパラと

魂を統治する 私的な自己の形成 作者:ニコラス・ローズ 以文社 Amazon 治療は文化である―治癒と臨床の民族誌 (臨床心理学 増刊第12号) 作者: 金剛出版 Amazon 現代スピリチュアリティ文化論――ヨーガ、マインドフルネスからポジティブ心理学まで 作者:伊藤雅…

『日本の経営』

日本の経営 作者:尾高 邦雄 中央公論新社 Amazon 1965年の著作。内容的にも、経営の近代化・民主化(=従業員参画型経営の実現)に向けた提言の書ということで、新人間関係論とかなりオーバーラップする。で、仮想敵は、やはり、と言うべきか、ヒューマン・…

『相互行為分析という視点 認識と文化』

相互行為分析という視点 認識と文化 (13) 作者:西阪 仰 金子書房 Amazon だいぶ前に買ってパラパラとつまみ読みしていたのを、通して読んでみる。エスノメソドロジー(本書では一貫して「相互行為分析」という語が用いられているが)の本。事例としては、「…

『社会学的方法の規準』

社会学的方法の規準 (講談社学術文庫) 作者:エミール・デュルケーム 講談社 Amazon ここ最近は、自分の問題関心的にこれからどのような方法で研究を進めていこうかということを考えていて、言説分析とかどうだろうということで、フーコーの著作とかを少しず…

『終わりなき日常を生きろ オウム完全克服マニュアル』

終わりなき日常を生きろ―オウム完全克服マニュアル (ちくま文庫) 作者:宮台 真司 筑摩書房 Amazon リリィ・シュシュを見たらなんか90年代を懐かしむみたいな気持ちになってしまって、90年代と言えば、そして、リリィ・シュシュとも関係のありそうな論考とい…

『コミュニケーション・スタディーズ アイデンティティとフェイスからみた景色』

コミュニケーション・スタディーズ ー アイデンティティとフェイスからみた景色 (ワードマップ) 作者:末田清子 新曜社 Amazon インスタ映えとか就活の面接とか、他者に向けて私をどのように見せるかという観点から日常のコミュニケーションを取り上げて卒論…

『おおかみこどもの雨と雪』

おおかみこどもの雨と雪 宮﨑あおい Amazon 金曜ロードショーでやってた。身元を隠して「ふつうの人間」として社会にパッシングしていくのと、身元を隠さずに「ふつうの人間」たちの社会とは違うところで生きていくこと、その両方が肯定されるということで、…

『産業文明における人間問題』

産業文明における人間問題 (1951年) Amazon 人間関係論〜組織開発の学説史をもう一度整理しておこうというので、まずはメイヨーの1933年の作から。この本は大きくは三部構成になっていて、まずは産業(労働者)研究においては生理学のみならず心理学をはじめ…

『近代・組織・資本主義 日本と西欧における近代の地平』

近代・組織・資本主義:日本と西欧における近代の地平 作者:佐藤俊樹 発売日: 1993/11/15 メディア: ハードカバー 簡潔に読書記録をまとめてみようということでやっているこのブログなのだが、それをこの高密度なテクストについてやってみろというのは、土台…

『OLたちの「レジスタンス」 サラリーマンとOLのパワーゲーム」

OLたちの「レジスタンス」―サラリーマンとOLのパワーゲーム (中公新書) 作者:小笠原 祐子 発売日: 1998/01/01 メディア: 新書 Ybema et al. (2009) の組織エスノグラフィーのハンドブックのビブリオグラフィーに挙げられていたので。 職場において女性は、色…

『ただ波に乗る Just Surf サーフィンのエスノグラフィー』

ただ波に乗る Just Surf―サーフィンのエスノグラフィー 作者:水野 英莉 発売日: 2020/04/03 メディア: 単行本(ソフトカバー) 滅多に行かないのだけど、私は海が好きで、ほとんど何も知らないのだけれど、サーフィンにはぼんやり関心はある。ということで、…

『先生のホンネ 評価、生活・受験指導』

先生のホンネ~評価、生活・受験指導~ (光文社新書) 作者:岩本 茂樹 発売日: 2014/08/01 メディア: Kindle版 Kindle Unlimitedで読んだ。学校という場には色々と人間関係上の困った問題が起こりがちで、それというのも、学校の先生に対してはどうも「先生は…

『社会を知るためには』

社会を知るためには (ちくまプリマー新書) 作者:筒井淳也 発売日: 2020/09/18 メディア: Kindle版 適切に社会を記述するためには、「意図(目的)と結果」という枠組みから自由に社会を記述することが重要です(145頁) ということを全編にわたって主張し続…

NHK100分de名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』

NHK 100分 de 名著 ブルデュー『ディスタンクシオン』 2020年 12月 [雑誌] (NHKテキスト) 発売日: 2020/11/25 メディア: Kindle版 100分de名著で、ブルデューで、岸先生ということで、読みますやん。差異化・卓越化的なテーマをやりたいという学生…

『方法論的個人主義の行方 自己言及社会』

方法論的個人主義の行方―自己言及社会 作者:犬飼 裕一 発売日: 2011/03/31 メディア: 単行本 大学院生の頃に読んで、冴えた論考だなあと興奮していたのだけど、ここ最近、改めて個人主義という思考形式の問題について考えてみたくて、久々に手に取った。自ら…

『質的データ分析法 原理・方法・実践』

質的データ分析法―原理・方法・実践 作者:佐藤 郁哉 発売日: 2008/03/25 メディア: 単行本 質的データの分析法を一通り教えておかないと、インタビューの時のクエスチョンごとに結果をまとめてくるという卒論が頻出しかねないので、コーディングとストーリー…

『大人のための社会科 未来を語るために』

夏休みだし、社会勉強しとこうということで。 内容としては、自分の立場に固執し、異なる立場へのヘイトが撒き散らされがちな昨今、そして、アカデミアのなんか上から目線のもの言いが気に入らないという人が増えがちな昨今、あえて上から目線で、私たちの社…

『「個性」はこの世界に本当に必要なものなのか』

ええ、わかってましたよ。「個性は本当に必要なものなのか?」みたいな問いかけをしたからといって、結論がまず「必要ない」とはならないことなんて。でも、「社会的に価値ある個性を発揮しよう」、したがって「個性は必要なものだといわざるをえない」とい…

『私たちはどのように働かされるのか』

ゼミのリーディング教材にするといいかなと思って読んだ。 主張としては、「労働を規制することが必要」(174頁)というもので、ここで「規制」とは、(自己責任としてではなく)法的・制度的・慣習的に労働のあり方を作り変えていくといった意味合いが含ま…