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I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『終わりなき日常を生きろ オウム完全克服マニュアル』

リリィ・シュシュを見たらなんか90年代を懐かしむみたいな気持ちになってしまって、90年代と言えば、そして、リリィ・シュシュとも関係のありそうな論考といえばコレだろうということで、ざっと読む。日常というのは過酷なもので、人は日常に耐えるのが苦手である。延々と似たようなことを繰り返し続け、退屈で代わり映えもせず、ダメなやつはダメであり続けるし、一発逆転なんてものもありそうにない。人はそんな日常からの脱却と救済(日常の終わり)を夢見るが、その行き着く先こそがオウムの地下鉄サリン事件なのであって、むしろ、出口のない鬱蒼とした日常を受け入れること、そして、その終わりなき日常の円環の中で軽やかに生きる術を学ばないといけない、という感じの本。

その意味では、『リリィ・シュシュのすべて』でも、結局リリィ・シュシュは救済してくれなかったし、一連の出来事の後でも、さして日常は変わらなかったわけである。日常から脱却しようとして死ぬ奴は死に、生き残った奴は単に生き残ったというだけ。どこかが成長したわけでもなく、ただ、以前と同じような日常が繰り返されるだけである。そういう映画なので、一部のレビューで「この映画には何もない」と否定的に書かれていて、それは確かにその通りなのだが、そういう批判のしかたは、まあ、野暮ですよね。