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『社会を知るためには』

社会を知るためには (ちくまプリマー新書)

社会を知るためには (ちくまプリマー新書)

 
適切に社会を記述するためには、「意図(目的)と結果」という枠組みから自由に社会を記述することが重要です(145頁)
ということを全編にわたって主張し続ける本。
 
もし社会が誰かの意図通りに作られているとしたら、社会(の変化)は、その主体の意図・行為の水準で記述でき、つまり、社会を動かす権力を持った主体(政治家や経済界のリーダー)の意図や行為を観察・記述すればいいということになる。こうした記述には「わかりやすさ」という思考コスト節約の快楽があるために、ついつい私たちはやってしまいがち(e.g. 陰謀論)なのだけど、社会ってそんなもんじゃないですよね、例えば未婚化・晩婚化みたいな社会の動きは誰かが意図して作り出したというのはありえないし、それを政策によって思い通りにコントール・解決できるみたいなのもありえない、ということで、社会を「意図(目的)⇒結果」みたいに直線的に薄っぺらくとらえるのではなく、もっと厚みのあるものとしてとらえるために、「意図せざる結果」(社会は人々の意図通りに動くものではなく、人々のあずかり知らないところでいろんな影響関係が生じている)と「緩さ」(社会の各部分は合理的に設計されているわけではなく、わりといい加減につながっている)という二つの視点から社会を見ていこう、という本。王道である。