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「カンブリア宮殿」の辻調理師専門学校の回

非常勤をしている大学の補講ということで、いつもとは趣向を変えて、ビデオを見せて学生にレポートを書かせることにしたのだけど、そのビデオ教材を何にするかということで結構悩んで、働き方改革関連のものとかどうかなと思って探したけどあまりいいのが見つからず、もうそれならと思い、ちょっと古いがこのカンブリア宮殿の傑作回、辻調理師専門学校の回にした。

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ここでは、単に料理のレシピを教えるのではなく、レシピの創造の仕方を教えるという辻調の人材育成、そのための教育上の工夫とかが特集されており、それだけでも興味深いのだけれど、何よりもこの回が素晴らしいのは、現校長の辻芳樹と創立者の故・辻静雄という親子の料理への執念というか「尋常でなさ」がよく伝わってくることにある。とにかくこの親子、いろいろとおかしいのである。

たとえば、料理を食べてその料理を作った人の年齢(とか、それまでの経緯)を当てるというクイズが家族内でよく行われていたそうで、もうその時点でおかしいのだけれど、辻芳樹によれば、「200回、300回と繰り返していると、誤差5歳くらいで正解が言い当てられるようになる」らしく、そういうことをまた平然と言ってのけるところが普通ではない。

また、辻静雄が書いた『フランス料理研究』という大著があり、そこではフランス料理の体系化や正統性の探究が試みられているそうなのだが、大判で1440ページ、見た感じ5キログラムくらいありそうな本で、村上龍も「言語に絶する」と言っていたが、ここまでやった人というのは本国フランスにもいないそうで、なんかもうドン・フリークスの『新大陸紀行』かと思うレベル。

辻芳樹が入学式で「みなさんが歩む技術の世界には終着点がありません」とスピーチするシーンがあるが、まさにそれを地で行くような「そこまでやるか」親子で、さらにはそうした人材を輩出している学校ということで、まあみなさん、このカンブリア宮殿はとてもオススメです。