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『人形館の殺人』読んだ

この作家さんの『十角館の殺人』 という作品がミステリ然としていて好きで、館シリーズはぼちぼち読んだり読まなかったりしているのだけれど、そのうちの一冊がこの『人形館の殺人』。

巻頭に「竹本健治さんに」とあるので、メタフィクション的な仕掛けでもあるのかしらと思いつつ読み進める。途中、明らかに犯人を匂わせるミスリードっぽいのがあるなと思ったらそれがそのまま真相になっちゃった、という流れで、そこはアマゾンのレビューなんかでも散々に言われているところだけど、その真相は実は括弧付きの「真相」かも知れないということを仄めかしもしているので、結局何が真相であるのかはもう一度読まないとわからない、けど、もう一度読むかと言われると、当分はいいかなあという感じ。

でも面白かったし、読み直して、もしそこに某人物の完全犯罪なんかが読み解けたら、興奮すると思う。

以下、ちょっと気に入った文章。

歩道に溢れる人間たち、渋滞した車の喧騒……街の雑踏はいつも、底知れぬ暗闇へと私を誘う。その魂の数だけ、苦しみがあるだろう。中には愛もあろうが、それよりも確実に多くの憎しみがあるに違いない。それらがどろどろに混ざり合い、煮詰められた暗黒の湖に、私は惨めに充血した片方の目を浸すのだ……(228頁)

人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)

人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)