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I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『パララックス・ビュー』

パララックス・ビュー [DVD]

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  • ウォーレン・ビーティ
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こないだ読んだマーク・フィッシャーの『資本主義リアリズム』で言及されていた映画。議員殺しにまつわる陰謀を暴くべく、ジャーナリストが一人、なにやら怪しげな動きを見せる企業への潜入捜査を試みる。で、その怪しげな企業というのが、結局最後までほとんど謎に包まれたままであり、実に不気味なのである。構図としては、自らの興味関心に駆動されてたった一人で(他者の制止を振り払ってでも)陰謀を暴こうとする強い「主体(個人)」と、正体不明の匿名的な「構造(企業)」が対峙するというもので、後者の企業の構成員については、作中に多少は顔の見える具体的な人間が登場して、主人公と接触したりするのだが、ラストシーン、主人公に悲劇的な結末をもたらすその当の人物の顔がわからない——ふつうなら、これまでに話に登場しており、主人公と関わりのある「顔の割れた」人物が手を下すはずなのに、そうならない——というのが、まあ実に不気味なところ。