よかった。リンチがアトリエでなにやら奇妙なオブジェを制作している映像に、幼少期から『イレイザーヘッド』の撮影に至るまでの半生を振り返るインタビュー音声が重ねられていくというもの。そういう意味では「プロフェッショナル 仕事の流儀」みたいなものではあるのだが、まあリンチの語ることといえば、子供の頃にいつものように父親の帰りを待っていたら通りの向こうから全裸の大女が口から血を流しながら歩いてきた話とか、草が伸び放題の庭で鶏の真似をしながら「私はチキン」と延々叫び続けるフィラデルフィアの隣人の話とか、ダイナーで知り合った死体安置所の夜勤の人に誘われて真夜中に死体見学に行く話とか、「あの頃はどこに行くのも本当にイヤで、部屋が僕の全世界だった」とかいう話なので、リンチのファンは安心して見ることができる。
