読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『スマイルズという会社を人類学する 「全体的な個人」がつなぐ組織のあり方』

「全体的な個人」という書籍のタイトルとしてはあまり見慣れない言葉が副題に入っていたので、これは読まねばと思って読んでみた。人類学者がスマイルズという会社について人類学をするという内容なのだが、冒頭、モダン/ポストモダンとかシステム/ネットワークとか、いろんな二項対立を用いつつ議論がいやにわかりやすく交通整理されて進んでいくので、ちょっと大丈夫かなぁと思っていたら、当のスマイルズという会社の中にこうした二項対立的なフレームが充満しており、著者たちはそれを気前よく言葉通りに受け取っているらしい。まあ社名入りで本を出している以上、そんなに斜に構えた解釈とかは当然できないだろうし、内容としても決して薄っぺらいというわけではないのだけれど、全編を通して「全体的な個人のネットワーク」推しで乗り切るというのはちょっと無理があるような気もしなくはない。でも、スマイルズという会社の経営手法として、色々と考え込まれたフレームというか言説をうまく活用している様子はよくわかるし、そうとなれば自分としてはどのような分析をしてみるかなということで興味をそそられる、そんな本です。