読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『天国と地獄』

黒澤明というと巨匠も巨匠だしなんとなく難解なような気がして、これまで『羅生門』くらいしか見ていなかったのだけど、まあこの『天国と地獄』はよくおすすめされている作品だし見てみるかと思って、ツタヤの定額宅配サービスで借りてみた。と、いうところまではよかったものの、そこは天下の黒澤明である、なかなかさあ見ようという決心が訪れず、そこからまた長らく積ん読状態で放置していたものを、いい加減に見ないとツタヤの代金の元もとれないというので渋々気合を入れて見てみたら、なんのことはない、冒頭からめちゃくちゃおもろいのである。143分というまあまあの長さがあるが(それでも黒澤作品では短い方だが)、最後まで一気に見れる、というか、ほとんど釘づけで見ずにはいられない。冒頭、二転三転するストーリー、どちらを選択しても積んでいるという状況設定など見事としか言いようがないし、登場するキャラクターたちがみなかっこよくて味がある(三船敏郎はもちろん、仲代達矢はじめ刑事さんたちが揃いも揃ってみな良い)。で、結末で犯人の告白があって、そこで語られる動機についてはまあほんまかいなという感じなのだが、そこで初めてタイトルの「天国と地獄」という意味もわかって、この「天国と地獄」というごくありふれた対比こそが事の発端であったという、なかなかにくいタイトルをつけたなと思うわけである。