読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『経営と勤労意欲』

人間関係論の系譜を辿る、ということで。人間関係論ということで言えば、「メイヨー=レスリスバーガー」というふうに一緒くたにされることが多いが、以前に読んだメイヨーとはだいぶ感触が違う。どちらも臨床的なアプローチを自称しているが、メイヨーの方は、もともと医学とか心理学の人だったこともあり、産業において働く人たちが抱える病理(強迫観念的思考)を治療していくことを目指すという点で文字通りに「臨床」であるのに対して、レスリスバーガーの方は、「臨床」という言葉を比喩的に用いていて、議論の主題は経営組織における集団を対象とした健全な管理を実現するための概念や方法を指南するという具合で、なんというかレスリスの方が経営学っぽいのである。で、臨床ということでいうと、レスリスバーガーは「人間管理の十か条」みたいな抽象的な規範論には批判的で、どのような管理施策が有効であるかは、現場(労働者たちの全体情況)により千差万別、現場をよく理解しない限りどうとも言えないというスタンス。なので、本書で彼が提示するのもあくまで、管理者が目の前に存在する生身の人間(関係)を診断し、自ら問題を解決していくための管理方策を考案・実施するための枠組み・道具であるということになる。そして働く個人とか職場の人間関係とかはすべて互いに関連しあった動態であるから、こうした診断のプロセスは毎日の終わりなき課題である(管理者には相当の神経を使わせることになる)、と述べているあたりなど、明らかにアージリスとかシャインへと展開していくことになるだろう、経営学っぽい水脈なのである。