読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『日本の夜と霧』

ううむ、おもろい。 なにやら不穏な雰囲気の結婚式のシーンに始まり、どうも新郎新婦はじめ出席者はみな安保闘争の参加者であるらしいのだが、そこへの突然の乱入者を皮切りに、学生運動をめぐる政治討論に流れ込む。で、そのまま映画は終わる。まあ政治討論というか、なにが正しい闘争であるのかということをめぐる真面目だが空虚にも聞こえる水掛け論、そこに身内同士の色恋沙汰の暴露話なども混ざってきて、解放を議論しているはずがどこまでもじめじめと閉塞していく。

1960年安保闘争の直後に急ピッチで制作、同年公開に漕ぎ着けたとのことで、たぶん長回しの一発撮り、多少のNGも撮り直さずにそのまま映画にするよということだったのだろう、俳優たちはみんな緊張しっぱなしで、実際セリフも噛み噛みなのだが、そうした息の詰まるような雰囲気が実に映画の内容にマッチしている(セリフの言い間違い、言い淀みについては、所々会話の流れを破綻させかねないような危ういものもあって、シーンが神妙なのもあいまって、これ役者さんたちも笑いを堪えるのに必死だったんじゃないか、みたいな、そういう点でもおもろい)。全体的に重苦しい感じではあるが、話に入り込みやすくする謎解き的な仕掛けもあって、見る側からすると、最初は一体今どのような状況であるのか、なにが議論されているのかわけわからん、という状況が、ジャズのソロ回しのように登場人物が一人ずつ回想を交えた独白をしていく度に、少しずつ問題の全貌が浮かび上がってくる、という構成になっている。