読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『経営の行動科学 新しいマネジメントの探求』

1976年の著作を読んだついでに、この1961年の著作もざっとふりかえり。まあ合わせて読んでみると、リッカートの議論の原型はほぼこの『経営の行動科学』で出揃っているのがわかる(というか、1976年の本はほぼ以前に書いたものの繰り返しで埋められている)。「システム1〜4」という名称こそ用いられていないものの、管理方式の4類型の議論もちゃんとあるし。そしてまあ、教科書にも載るような重複集団とか連結ピンとかの議論ももちろんだが、理論的には、個人の動機から出発して、集団内の支持的関係を大原則として唱えるところ、方法論的には、媒介変数と測定の経営実務における導入と活用、これらがリッカートの経営学のキモであり、本人自身が「新たな管理」として打ち出しているものの本丸なわけである。正しい測定やデータ解釈には専門的技能が必要で、だから経営には社会科学の専門家の助言が欠かせないとしれっと述べているところも見逃せない。リッカートの著作には、その端々に「実証科学者」としての強烈な自負が覗いており、調査対象者とかクライアントと自身との関係について変に語ったりしないところが実証主義者として一貫しているのだが、時にそうした専門家としての自負が彼の提唱している支持的関係の原則に抵触しかねないようなところもありそうで、どうなんでしょうねえ、というところ。