読んだもの観たもの

I'm not a very good communicator, so maybe that's why I write about talking

『人はなぜ物語を求めるのか』

うーん、これはちょっとどう評価したものかという感じだが、内容としては物語論(感動する物語の作り方とかそういうのではなく、世界を物語という形式を通して理解する認識作用のあれこれについて)が解説されており、物語論ということで素材的には面白いはずなのだけど、いかんせん議論が混み入っているというか同じところをぐるぐる回り続ける感じで、それも物語がいかに人間の自由を拘束するか(そしてそれに私たちが気づかずにいるか)という主題の周辺を回り続け、さあいよいよそうした物語からの解放だということで話が進んだかと思えば、また自由の抑圧の話題に戻ったりという感じで、まあ著者も色々苦労してきたんだろうというのはわかるが読んでてちょっと重苦しくなってくるし、それがまた読者との距離を近く取ろうとするような文体で書かれているので、余計しんどくなってくる。たぶん著者としては気楽に読んでほしいということなのだろうけど、著者の人となりが本人の意図とは違うところで溢れ出しているような本なので(また「そういうふうに書いている」とも読めてしまうので)、そういう点で合う合わないがある本なのだろうと思う、という感じで、内容というよりそういう点ばかりが気になってしまった。

巻末の読書案内は、たくさん文献が紹介されており、ためになる。